「村上善男・芸術の軌跡」
東北に根をはり、東北の風土と一貫して向き合い続けた美術家
村上善男(1933-2006)。
村上の世界は、自分の生まれ育った風土や地縁に残るモノや記憶の断片を収集し、思考の堆積物として構成されています。大学での授業科目「芸術と文化」は
「わが国の風土と文化を考えるとき、われわれは、芸術のジャンルごとに、〈風土論〉を構想し展開してきた。今新たな視点のもと、各ジャンルの垣根を取りさり、例えば文学を美術の目で、美術作品を文学的に読み解くような切り口を提示してみる。〈風土〉の地下水脈を探る試み、といってもいい。受講者も創る人でありたい。」
-1993年3月-
というのが、生涯教育課程の学生への村上のスタンスでした。
1950年代後半から活動を開始し、1960年代には無数の注射針を平面に並べて透明なポリエステルで固定した作品、さらには図形や文字、数字、記号等によるクールで造形的作品によって高い評価を得ました。1970年代に入って気象図や貨車をモチーフとした作品へと展開し、1982年以降は弘前市を拠点に活動を続け、古文書の切れはしを貼って作る「卍町に釘打ち」と名づけられたシリーズ、「起絵図」シリーズなど何らかのかたちで一度刷られた記号を扱い制作しました。
村上家は盛岡・紙町で紺屋「越後屋」という染色業を営んでいました。その型(版)を使って彩る稼業に生まれたことが、作品に大きく投影され、村上世界に特有の効果と魅力になりました。緻密な計算による画面構成と制御の効いた色彩を持つ理知的な作風が村上芸術の一貫した特長といえます。
本展示ではそうした村上芸術の仕事の一端を垣間見ることができます。
2012・10・17 美術講座・岩井康賴
印壓と風速計(馬込書房)、津軽北奥舎201(用美舎社)、仙台起繪圖(用美舎社)、盛岡風景誌(用美舎社)、松本竣介とその友人たち(新潮社)、北奥百景(用美舎社)、色彩の磁場(NOVA出版)、萬鐡五郎(有隣堂)、津軽明朝舎(北方新社)色彩の磁場から(紅書房)、萬鐡五郎を辿って(創風社)、赤に兎・岡本太郎頌(創風社)、浮遊して北に澄む(創風社)
神奈川県立近代美術館、京都国立近代美術館、埼玉県立近代美術館、東京都美術館、栃木県立美術館、原美術館、福島県立美術館、北海道立近代美術館、北海道立旭川美術館、広島現代美術館、宮城県美術館、横浜市民ギャラリー、萬鉄五郎記念館、東北大学医学部図書館新築記念タピストリー、弘前大学創立五十年記念ホールのステンドグラス